ここはどんな現場?
──イワセさんは、マンションをたくさん手掛けて来られたんですね。
そうですね。入社から10年くらいは学校やホテルなど様々な建物を担当してきたのですが、ここ10年ほどはなぜかマンションが多くて、他の人よりちょっとだけマンションが得意かもしれません。
──今回はどんな現場なのでしょうか?
駅の近くに建つ、総戸数111戸の分譲マンションを建築しています。ここの現場をナンバー2として取り仕切ってくれているのが主任のイトウ。そして、彼の下で施工全般を担当しているのが若手のヨシダです。
現場で育つヨシダさんのこと
──若手のヨシダさんの仕事はどのような?
外装周りの施工を担当しています。研修の頃を除くとマンションの現場は初めてなので、職人さんから知識を得たり、イトウさんに相談したりしながら勉強中ですね。
ヨシダには担当として外装工事を受け持ってもらってはいるんですが、今は特定の工種だけに特化していくというよりは、施工のいろいろな領域を知ってもらう段階かなと思っています。マンションの基礎工事から躯体工事、仕上げ工事まで、全体の流れをこの現場で知ってもらいたいですね。
私も、入社当時は「全体の流れを自分で体験する」ことでいろいろなことを学んだ覚えがあります。私の場合は現場の規模が小さくて必然的にそうなった、というのもありますが、次々に押し寄せる「わからないこと」を職人さんに聞きながら学ぶのってすごくためになるんですよね。
そうですね。ここでマンションの建築工事の流れを一通り体験できたら、次の現場ではある工種を深く掘り下げていくこともできます。まずはなにもないところから建物がどうやってできあがっていくのかというのは、これから現場の中心として活躍していく上で知っておいてもらいたいなと思っています。
現場を取り仕切るイトウさんについて
──ヨシダさんから見て、イトウさんはどんな先輩ですか?
厳しくも優しい先輩です。むしろ、僕の中ではちょっと優しすぎるくらいかなと思っています。学生時代は体育会系だったので、建設会社に入ってみて「そういうの」を覚悟していたところはあるんです。でも、イトウさんは絶対に怒ったり、声を荒げたりしません。
これは日本国土開発のいいところだと思っているんですけど、みんな人に対して穏やかで丁寧な接し方をしますよね。怒鳴ったり、理不尽なことを言ったりする人はちょっと見当たりません。特に私は30歳を過ぎて未経験でこの業界に入ってきたので、この社風じゃなかったら建設の仕事を続けられなかったかもしれない。だから若い人たちのためにも、この空気は大事にしていきたいなと思っています。
ヨシダみたいな元気のいい人間は、最初から萎縮させちゃうんじゃなくて、ある程度自分の思う形でやらせてみたほうがいいというのは同感ですね。もちろんなにか大失敗をしでかしそうだったら軌道修正もしていきますが、受け身ではなく自分なりに考えてものごとを進めていくのはこの仕事では大切なことですから。いいところを伸ばしつつ、知識を身に着けていってくれたらいいですね。
現場に対するイワセさんのこだわり
──実は、イワセさんとイトウさんは過去にも同じ現場にいたことがあるんですよね。イトウさんから見たイワセさんは、どういう人ですか?
なんというか、仕事が大好きな人ですよね(笑)。
うん、まあ、そうかもしれない(笑)。仕事が好きというよりは、こだわりが強いのかもしれないですね。「ここまででいいか」というのではなくて、自分なりにここまで突き詰めて納得しておきたい、という気持ちになるんですよね。
なにか気になることがあったとき、普通なら「まあ、明日やればいいか」というようなこともその日のうちに現場に出て解決しておかないと気がすまない。つくづく仕事人間だなあ……と。
僕が感じるのは、そのこだわりは後から「手直し」が発生しないようにするためにあるということですね。今は大変でも、ちょっとこだわっておくことで失敗につながりそうな要因を未然につぶしておく。その考え方や仕事の進め方は、自分でも身につけたいなあと思っています。
この現場で大切にしていること
──マンションの建築で皆さんが大切にしていること、こだわっていることはどんなことですか?
マンションの工事に10年くらい携わっていますが、毎回身が引き締まりますね。何千万円もするものを購入して、新しい暮らしを楽しみにしている方が、私たちの仕事の先にはいるわけです。そう思うと「不具合を出さないためにはどうすればいいか」「もっと良くするにはどうするか」とこだわりも強くなっていきますよね。
私たちの仕事を評価するのは、お施主様だったり、私たちの会社だったりしますが、いちばんに考えるべきなのはマンションに住むことになるお客さまだと思っています。お客さまが求めていることをやろう、と。私たちの会社としての視点だけで言えば「そこまでやらなくても」ということがあるかもしれませんが、お客さまからの評判は巡り巡って私たちの評価にもつながると信じています。
いま自分にできるのは、そうしたこだわりを受け止めながら「工程に乗せる」ことだと思っています。そのためにも、実際に作業をしてくれる職人さんたちのことをもっと知る必要がありますし、コミュニケーションも取っていきたい。「ヨシダがそこにこだわるならやってみようか」と言ってくれるような関係を築き上げていきたいなと思います。