DXの「X」に
必要なもの
大学時代はGAN(敵対的生成ネットワーク)に関する研究をしていました。さまざまな事象の特徴をデータから学習し、特徴に沿った、まだ存在しないデータを生成するというものです。近年話題になったもので言えば、テキストから自動でイラストを生み出すサービスなどは、この技術から生まれたものです。
私自身は、こうした「世の中をギョッとさせるようなテクノロジー」が、DXにおける「X」……すなわちビジネスの変容につながっていくのだと信じています。
建設業界はよく言えば完成されたビジネスで、大胆な変化はあまり必要とされてきませんでした。しかし、異分野からこの世界に飛び込んでみると、完成形であると思われていた建設業にも、多くの課題が隠されているように感じます。
どんなデジタルが使う人から求められるものなのか、その視点を忘れないようにしながらも「ギョッとさせるようなもの」を生み出したいというのが、技術者としての密かな野望です。
技術への情熱と、人への想いと
仮にですが、デジタルの活用によって、これまでは習得に10年単位の時間がかかっていたものが、数年でできるようになったとしたら。施工の省力化という建設業の「X」は成し遂げられるに違いありません。でも、私が長年ノウハウを蓄積し、それにプライドを持つ技術者だったとしたら、「自分の10年を返せ」とか、「面白くない」と感じると思います。
だからこそ、技術を使う人の視点が欠かせないのです。単に「省力化」をするだけではなく、新しい技術によって、自分の仕事により一層誇りを持つことができる。これまで培ってきたノウハウに磨きをかけられる。そんな「X」こそが建設業を変え、ひいては社会の発展につながるはずなのです。
子供の頃、アニメやマンガに出てくる「マッドサイエンティスト」にあこがれていました。
ものすごい技術力を持ち、狂おしいまでの情熱で作りたいものをとことん突き詰め、結果を出す。ある意味でとても幸せな生き方だと思ったからです。
私は、技術へのそんな情熱を持ちながらも、人が幸せになれるものを作りたい。いま、強くそう思っています。