ここはどんな現場?
──この現場について教えてください!
ここは、およそ30ヘクタールの土地を工業用地として整備する「土地区画整理事業」の現場です。組合と伴に地権者の方や行政と協議をしながら、土地の区画を整えたりインフラを整えたりして、より住みやすい街をつくるんですね。この計画から施工までを、日本国土開発が担当しています。
──大きな物流倉庫も広い道もあるし、まさしくひとつの「街」ですね。
物流の大動脈である国道からつながる新しい道をつくったり、水害を防ぐための調整池をつくったり、宅地を整備したり、新しく電線を引き込んだり……いろいろな工事をしました。私たちの他にも多くの協力会社の方が関係する大規模な現場です。
街の大動脈「22m道路」
──ピカピカの道で気持ちがいいですね!
「22m道路」と呼んでいます。土地区画整理事業のエリア内を南北につないでいて、北側は大きな国道に接続されています。国道の拡幅工事をやりながら、同時にこの22m道路を開通させるための工事もやる。いろいろな調整が必要で難しい工事でしたね。
この道路が接続する国道は非常に交通量が多いので、拡幅工事ができるのは夜間だけでした。そこで、ミスミとマシコを含む3名が、それぞれ1週間ずつ交代で夜勤をしながら管理をしていったんです。
──それは大変そう。
夜勤そのものが大変というよりは、自分の持っているバトンを次の人へスムーズに渡していく必要がある、というのが難しいところでしたね。
昼勤・夜勤を交代で行うということはメンバー同士でそれぞれの仕事を引き継いでいくことになります。この状況を乗り越えるためには、自分の仕事を分かりやすく資料化し、メンバー同士が短時間で理解し引継ぎできるようにしておく必要があります。二人にとっては初めてのケースで苦労したと思いますが、チームワークで工事をスムーズに進めていってくれました。所長として見ていて頼もしかったです。
──なるほど。
イニシさんが要所要所でフォローを入れてくれて、何でも聞きやすい環境をつくってくれたのがすごく助かりました。自分もマシコのような若手が信頼してくれて、困ったときにどんどん相談してくれるような先輩でありたいと考えてきましたが、これからもそんな気遣いを忘れないようにしたいなと思いました。
ミスミのように、ある程度経験を積んでくると「こんなことを聞いていいのかな」と躊躇してしまうこともあるかもしれないと思って、敢えていろいろなことに首を突っ込むようにしていました。「おせっかいなオジさんだなぁ」と思われていなくてよかった(笑)。
街の安全を守る「調整池」
──これは調整池ですよね。
そうです。大雨が降って増水したときここに集めて、少しずつ川に流すための施設ですね。担当者としてここを完成まで持っていってくれたのが、マシコです。
入社1年目の冬頃から担当になって、入社2年目の夏頃から一人で材料の手配や協力会社さんとの調整などをするようになりました。
「底版コンクリート打設」という調整池の底をつくる工程では、建設の仕事が「コミュニケーション」からできていることを痛感しました。
──というと?
材料である生コンクリートをいつ搬入するか、その生コンクリートをどんな機械配置で、いつ打設するか、といったことを段取りしていても、雨が降ってしまったら調整のし直しです。関係する業者の方といち早くコミュニケーションを図って、次の手を考えないと工事が止まってしまうし、工期が延びていってしまいます。
毎日のように調整が必要で苦労もしましたが、いい経験をさせてもらったと思っています。
マシコには自分の担当箇所を持って「いいものをつくるんだ」という意識で、最後までやり遂げるということをやってもらいたいなと思ってきました。最初の頃のマシコは「とりあえず聞く」という感じでしたが、この仕事を通じて「自分はこう思うけれど、どうですか?」というふうに、いろいろと考えて動けるようになったと思います。
街づくりの楽しさ、現場の魅力
──みなさんのチームワークがこの広大な街をつくりあげてきたんですね。
何十年も前に、私が初めて現場の主任をやったときのことです。検査の場で、検査官への受け答えを任せられました。質問が最前列に座る私に飛ぶんですが、初めてのことで緊張してしまい、自分では上手く答えられないこと、わからないことだらけで手も足も出ませんでした。検査が終わった後、検査に同席して頂いた技術部長が私のところに来て言ったんです。「何のために俺がいると思っているんだ。後ろを向いて『ここはよろしくお願いします』でいいんだ」と。
──なにもかも自分でやるんじゃなくて、みんなでやるんだと。
そうです。それを聞いたときに、この仕事のやり方がわかったというか、すごく成長できた気がするんです。一人ですべてを背負うのではなくて、一人ひとりが与えられた役割を全うしながらも、支え合うことで現場が成り立っている。そういうことはもっとみんなに伝えていきたいし、実践していきたいと思いますね。
──新卒の頃からこの現場で育ってきたマシコさんにとって、特に思い出深いできごとはありますか?
自分が作ってきた調整池が「グーグルマップ」で見られるんですよ。いろいろと苦労したし大変だったけれど、大雨のときに機能して地域を守っている。そしてその作り上げてきた構造物が衛星写真にも写っている……と思うと感慨深くて。
道路ができあがってクルマが走り始めたり、信号が点灯したり。そういう瞬間の「あっ、できた」という達成感というか、充実感というか。これは、この仕事を始めて何年経っても「いいなあ」と思うんですよね。ミスミもそうでしょ?
そうですね。世の中に「同じもの」は一つとしてない。他のものとは条件も違うしプロセスも違って、自分たちのアイディアなり技術なりが散りばめられているんです。これは他では味わえない建設ならではの魅力だし、現場の面白さですよね。
現場っていいですよね
いいよね……。
いいよね……。