ここはどんな現場?
──ここはどのような現場なのでしょうか?
国道の災害復旧工事を行っています。2020年の豪雨災害で崩れてしまった場所なのですが、次の大雨が来たらさらに崩落してしまうかもしれないという、非常に危険な状態からのスタートでした。2027年の7月、すぐ近くに道の駅がリニューアルオープンする予定で、それに合わせて誰もが安心して通れる新しい道路をきっちり開通させることが、私たちのミッションですね。
2020年の豪雨では、それまで想定されていたよりも高い位置まで増水してしまいました。なので、盛土をすることで道全体をかさ上げし、同じような豪雨があっても浸水しないようにするんです。多くの車が通る国道なので、工事といえども通行止めにはできません。片側ずつ一般の車を通しながらの工事になるので、とても難度が高い現場であると言えますね。
かなりの急勾配の場所で掘削をしていることもあって、斜面が少しでも動くと法面崩壊などの大変な事態につながりかねません。状況の変化にはいち早く気づけるよう、道路の沈み込みや斜面のわずかな動きをミリ単位で計測・監視する「沈下管理」は徹底して行なっています。
所長のこと、仲間たちのこと
──バイトウさんは今回初めての所長を務めるとのことですが、どんな感じの現場ですか?
そうですね。私自身まだ30代で、弊社の中でも所長としては若手なほうです。メンバーに関しても、ベテランのカナクリさん、機械工学出身のシライシ、美術大学出身のリと、経歴も年齢もバラバラなチームですね。
リと私は、前に同じ現場にいたことがあるんです。シライシとも面識はありましたが、「顔見知り」という程度でした。だから、この現場で一緒に仕事をすることになってどんな感じなのかなと思ったのですが、二人とも若いのに「どうしたらいいんだろう」ってウロウロしちゃわないのがいいですね。
そうですね。現場はコミュニケーションが大事なので「なにも言ってくれない」のが一番困るんですが、シライシは現場でなにかあったらすぐに教えてくれるし、リはわからないことを自分で調べた上で、AIも使いながら自分で言語の壁をぶち破ろうとしている。それから、私はどちらかと言えばぶっきらぼうな言い方をしてしまうタイプなんですが、2人はそれに落ち込まず、指摘を素直に受け止めて改善してくれるので助かっています(笑)。
バイトウさんは遠回しにではなく「ここがよくない、こうしたほうがいい」とスパッと言ってくれるので、自分でもすごく納得できるんですよね。入社当時は「土木の世界って、『見て覚えろ!』の昭和の空気感が残る怖い世界なのかな」と勝手にイメージしていましたが、入ってみたらバイトウさんに限らず皆さん優しくて、逆の意味でギャップがありました。
専門用語が多い打ち合わせのあとに「わかりましたか」って聞かれて「わからないです」と正直に答えたら、所長はもう一度丁寧に噛み砕いて教えてくれました。知らないことをその場でしっかり解決していけますから、なにか間違ってしまってもすぐに修正でき、次はもっとうまくやれると思います。先輩方には丁寧に教えていただいて、本当にありがたいと思っています。
所長って、大変?
──所長の仕事って、大変ですか?
まだ「主任」を1現場しかやっていない中で「所長をやってくれ」と言われたので、最初は不安に押しつぶされそうでしたね……それこそ食事も喉を通らないというか。これまでは誰かが責任を取ってくれましたが、お金のことも工程のことも、自分で責任を持たなくてはいけないので。
でも、九州支店の大先輩も、過去の現場でお世話になった先輩方も相談に乗ってくれましたし、なによりカナクリさんがこの現場に来てくれたのでかなり気持ちが楽になりました。育休中は支店から応援が来てくれたり、カナクリさんとみんなが現場を回してくれたりと、まわりのサポートに助けられています。
この現場のことを聞いて「これを一人でやるのは大変だな」と思ったので、所長のサポートとしてここに来られてよかったと思います。会社としても若い人にどんどんチャレンジをさせようという方向で動いているので、その期待に応えるという意味でも、まずはこの現場を何事もなく完遂させられるようにしたいですね。
所長やカナクリさんは発注者の方との打ち合わせで忙しいし、現場はできるだけ私とリの2人で回せるようにしたいなと思っているんですが、最近なんとか流れに乗せられるようになったかな、という感じです。やることも覚えることも多くて時間が経つのが早いですね。
私も毎日あっという間ですが、シライシさんと2人で測量をしたり、協力会社の皆さんとやり取りしたりして、忙しいけれど毎日充実していて楽しいですね。現場もアットホームで、わからないことをすぐにフォローしてくださるので、とても幸せな現場だと感じています。
所長になってなんでもかんでも聞いていたら、大先輩から「自分でハンドルを握らないと道は覚えないぞ」って言われたんですよ。いい言葉だな、これ使おう!と思って(笑)、シライシやリにも教えるだけではなく自分でやってみるという体験をしてもらっています。私も若手もここで成長できたらいいですね。
この現場の、ここがこだわり!
──災害復旧ならではの難しさや、こだわっているポイントはありますか?
通常の工事であれば、十分に時間をかけて現地調査をしてから設計を行いますが、災害復旧の現場では早期の復旧が最優先されます。そのため、調査と設計が同時進行になるなど駆け足で進められることが多く、どうしても限られたデータの中で図面を作成せざるを得ないのです。いざ工事を始めてみると「図面と実際の現地の状況が違う」ということがよく起こるのは、災害復旧ならではの難しさだと感じますね。
発注者さんも私たちも早期復旧を目指す思いは同じなので、現場の状況に合わせて「想定外だけれど、臨機応変にこういう対応に変更しよう」と、双方で話し合いながら進めることが多々あります。だからこそ、事前の検討が重要ですよね。隣接する工区を担当する他社さんとの連絡調整をしたり、BIM/CIMも使いながら本当に予定通り進められるかどうかのシミュレーションをしたり。ここを怠ると、隣の工区と車線の位置が合わずに道がつながらなくなるなどのトラブルが起きてしまうので。
たしかに。私も途中からこの現場に加わったんですが、あると思った図面がないとか、あれも必要、これも必要……みたいなことが多くて最初はバタバタでした。
それはそれで大変なんだけど、やりながら「どう対応すればうまくいくか」を考えるのも楽しかったりするよね。
そうですね。とにかく一日の密度が高くて、「あれっ、もうお昼だ!」「もう5時になっちゃう」という感じですが、日々成長できている実感はありますね。
この現場で大切にしていること
──最後に、現場で大切にしていることを教えてください。
私はまだ勉強中、成長中の身ですが、やっぱり楽しみながら仕事をしていきたいですね。この現場で先輩方から教わったように、今後後輩が入ってきても、そうしたいです。
私は入社時期の兼ね合いもあり、長い間どの現場に行っても一番後輩だったんです。後輩が入ってきた時は、どう接していいか最初はわからなかったのですが、指示を出す立場になると、自分の伝え方や話し方1つで皆の動きがガラッと変わるのを痛感しています。だからこそ、日頃からコミュニケーションを取りやすい、相談しやすい空気をつくるのが私のポリシーです。
そうですね。所長やカナクリさんがそうしてくださっているように、私も話しやすい空気をつくることが大事だと思っています。たとえば若手のリから言いたいことがあっても、いきなり所長には話しづらいこともあるかもしれないし。そんな時は自分が間に入って、うまく調整できるような雰囲気をつくっていきたいですね。
みんなが黙々と仕事をしている「静かな現場」って、個人的にイヤなんですよね(笑)。社員はもちろん、協力会社の方も含めて何でも話せて常にコミュニケーションが行われている状態にしたいです。その風通しの良さがあれば若手も臆せずチャレンジできるようになるし、協力会社の方とのパートナーシップも強化されていくと思います。
いろいろと考えなくてはいけないことの多い現場ですが、4人のチームワークを活かして、長く地域の皆さんの暮らしを守り続けるインフラを、確実に作り上げたいと思っています。
──ありがとうございました!
※本記事は2026年5月に実施したインタビューであり、工事進捗や人員構成、社員の情報は取材時点のものです。