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Vol.1土木・建築における「土」とはなにか

  • このバックホウとペアを組むダンプカーにも、幅広い選択肢がある。
  • 土木・建設の現場では、「土」が使われる。ところが、ただ地面を掘り起こした土をそのまま使えるわけではない。その性質を見極め、用途に応じて使い分け、適切な処理を施すことで、ようやく建物の安全やインフラの持続性を支える頼もしい「建設資材」になる。


    この分野には古くから人の知恵と工夫が注がれてきた。今から1000年以上前、弘法大師・空海が改修に関わった四国の「満濃池(まんのういけ)」は、いまも現役のため池として人々の暮らしを支えているし、城の石垣や古墳といった構造物も多くが現存している。コンクリートも鉄骨もない時代につくられたこれらが今も姿を保ち続けているのは、先人たちが土の性質をよく理解し、工夫して使いこなしていたからだ。

ところで、そもそも土は何でできているか、ご存知だろうか。私たちにとって身近な存在だが、きちんと説明できる人は意外と少ないはずだ。
答えは、固体の粒子・水・空気。この3つの物質が混ざり合ってできている。粒子の大きさによって「レキ」「砂」「シルト」「粘土」といった種類に分けられ、粒子の形状も土の性質に大きく影響している。例えば、平たい粒子は水分を含みやすく、土に粘りを出す。角ばった粒子は、粒子同士がかみ合いやすく、摩擦が生まれることで高い強度をつくり出す。


こうした性質によって、土が力を受けたときの変形の度合い、構造物として使用する際の強度、土の中の水の動きなどがどのように変化するのか。これを研究する学問が「土質力学」だ。人々が古くから経験として蓄積してきた土の特性を詳細に調べることで、現代のインフラ整備の根幹を支えている。

使い方次第で変わる土の力

そんな土はあらゆる工事と、切っても切り離せない関係にある。住宅やビルの基礎が思い浮かぶが、河川の堤防やダム、廃棄物処分場などでも土が用いられ、それぞれの使い道によって求められる性質も変化する。

同じ重機、異なる結果

堤防における土の使い方の例

例えば堤防では、水を通さない(遮水性がある)土を河川側に、水を通す(透水性がある)土を家屋側に配置するという使い分けがなされる。増水した河川の水が堤防内の土に染み込まないようにしながらも、盛土内部の水は適切に排水されるようにするためだ。水分を含んだ土の強度は低下し、決壊へと至るリスクがある。これを防ぐための工夫である。
他にも、ダムでは水圧に耐えられるように、廃棄物処分場では有害物質が地下水に溶け出さないように、適切な処理を施した土が使用されている。


  • ダムにおける土の使い方の例


  • 廃棄物処分場における土の使い方の例

はるか昔から人々の暮らしを支えてきた土。日本国土開発は土の持つ可能性を最大限引き出すために、現場での観察と試行錯誤を重ねながら、長年にわたって土と向き合ってきた。しかし、いまだに謎も多く、その全貌は解明できていない。はたして、この素材を完全に理解できる日は来るのだろうか。
Vol.2では、土木・建築における土の扱いと、その複雑な性質を掘り下げていこう。