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Vol.2 採ることも、捨てることも難しくなった土

  • かつての土木・建築において、建設資材として使える良質な土の確保はそれほど難しいことではなかった。工事に適した土は現場近くの山から、コンクリートの骨材となる砂利は河川から、それぞれ比較的容易に採取できた。しかし現在では、いずれも採取できる場所自体が徐々に減少し、安定した確保が難しくなりつつある。
    その背景にあるのが、「自然環境への配慮」だ。例えば、盛土の材料として山を切り崩すことは難しく、川砂利の採取は水質悪化防止の観点からも避けられることが多い。

また、「使えない土をどこに、どう処分するか」も深刻な問題となっている。採取できる場所が限られてきたのと同様に、処分可能な場所も年々減少しているのだ。もし無理に処分しようとすれば、安全性に大きなリスクを伴う。建設残土を不適切な場所に盛土すると、甚大な被害を起こす土石流災害を引き起こしかねない。
「都合の良い土を見つかるまで探す」「使えない土は捨てればいい」という発想は通用しない。持続可能性の実現を前提に、「目の前にある土をどう活かすか」が、現代の土木・建築におけるスタンダードとなっているのだ。

土を扱うのはかくも難しい

  • では、土にどのような手を加えれば活かすことができるのか。その命題について解き明かす前に、まずは土の繊細で複雑な性質についてご紹介してみたい。


    すでに触れたように、土は一見同じように見えても、その性質は非常に不安定なものだ。1km四方の、地質学的には「同じ土」とされるものであっても、そこに含まれる水分量(含水比)は採取した場所によって大きく異なり、天候によっても変化する。ある現場では、わずか数日で含水比は25%から80%まで変化した例もある。

  • さらに範囲を狭めてみたとしても、この不均質さは変わらない。同じ場所から採取された1.5tの土を密閉して、30kgずつに袋に小分けした場合でも、1袋ごとの含水比が異なるなど、均一性は保証されない。
    実験室でさえこれほどなのだから、現場での不安定さがご想像いただけるだろう。

また、土には「こね返し」と呼ばれる厄介な現象がある。掘削してきた土を混ぜ直す。たったそれだけで、見た目は変わらなくても、本来発揮できるはずの強度が失われてしまうことがあるのだ。これは、自然の状態では保たれていた微細な電気的結合が外から加わる力によって断ち切られ、内部構造が変化してしまうことが原因と言われている。


「土は生きている」。そう語る技術者は少なくない。環境条件や取り扱い方ひとつで性質を変える土は、まさに「生きた素材」だ。この繊細で複雑な性質を扱うには、豊富な経験に裏打ちされた技術が欠かせないのである。
Vol.3では、日本国土開発の取り組みを紹介しながら、土を扱う技術の「いま」を紐解いていこう。