ここはどんな現場?
──でっかい現場ですね。
太陽光発電所の造成をしています。太陽光パネルの土台になる土地をつくるわけですね。重機を持ってきて山を切り開くだけみたいに見えるかもしれないですが、「誰でもできる」仕事じゃないんですよ。
──というと?
豪雨があっても土砂が流出しないようにするためには綿密な排水計画が必要ですし、土を削ったり、盛ったりという工事の品質も求められます。民間工事なので、「この通りにやれば大丈夫」という仕様書はありません。自分たちの知恵と工夫で工期を守りながら品質を高め、利益も出さなくてはいけないんです。
私もオリハラも公共工事で「共通仕様書」というものがある仕事を長くしてきたのですが、これまでの経験を活かしながらどうすれば安全と品質と利益を両立させられるのか、日々悩んだり考えたりしながら頑張っています。
ここの現場の、ここがこだわり!
──では、皆さんの知恵と工夫の実例を教えてください!
そうだなあ、やっぱり調整池だろうなあ。
ええ、調整池の擁壁(ようへき)「1回打ち上げ(一発打ち)」ですね。
──詳しく教えてください!
調整池というのは、土砂災害を防ぐために降った雨をためておく池です。この高さの壁は通常3回程度に分けてコンクリートを打つんですが、ここでは1回で打ち終えているんです。見てください、この縞ひとつない仕上がり……。工期も短縮できて一石二鳥です。
──たしかに美しい。
これも、誰でもできるわけではないです。どのくらいのスピードでコンクリートを流し込めば型枠が変形しないかという検討を重ねて、コンクリートがコンクリートプラントから現場に配送されるピッチ(タイミング)まで我々の指示で調整しながら工事を進めたからこそできたものですね。
この現場の、ここもこだわり!
で、土砂を削って盛ってという「土工事」の品質を高めるために活躍してくれているのが若手のトリカイです。
ドローンを2週間に1回、完成が近くなったら1週間に1度くらいのペースで飛ばして、計画と現況との違いを把握しています。計画と違っていたらムネイシさんたちに報告をして、工事の進め方を見直してもらいます。
土を削って、運んで、盛ってというとこれも簡単に聞こえますよね。でも、実際には「土量変化率」というものがあって、削った量と運んだ量が1:1になるとは限らないんですね。これを定期的に確認して報告する仕事を彼に任せています。
今はまだ工事の計画までを考えられるレベルにはないのですが、自分がドローンから得たデータとムネイシさんたちの判断などを見比べながら、土工事の実際を学んでいます。次は原因を特定できるようになって、所長に「こうしませんか?」と提案できるようになりたいです。
そうなればもう「土工事のプロ」。トリカイのことは前の現場から知っているんですが、成長を間近で見られているのは素直にうれしいですね。
所長のこと、みんなのこと
──皆さんのプロフェッショナリズムが垣間見える現場ですよね。
トリカイは責任から逃げないのがいいですね。仕事である以上、ときには「こんなこと人に頼みたくないなあ」みたいな出来事も発生します。でも、それを人に押し付けたりしないで、自分で解決しようとしている。敢えて助けに行かずに見守ることもあります。
ムネイシさんのことは、オリハラさんから「すごく怖い人」と聞かされていて……。
えっ、そんなことないでしょ!?
はい(笑)。実際に話してみたら、何でも教えてくれる上に、いろいろと先まで見通して判断をしてくれる頼れる先輩でした。ムネイシさんが見守ってくれているから、安心していろいろなことにチャレンジできるんだと思います。
予算のことだけでなく人員のことも考えるのが所長の仕事なんですが、全国の現場から「取り合い」になるエンジニアであるムネイシをここに連れてこられてよかったと思ってます。自分で言うのもなんですが、社内から羨ましがられるような現場になっているんじゃないかなって(笑)。
──ムネイシさんとトリカイさんから見たオリハラさんは?
自分は悩んでいる様子が顔に出ちゃうんですが、オリハラさんはそんなそぶりを見せないのがすごいなと思っています。これは自分も見習わないといけないなと。
以前にも別の現場で排水の工事をやらせてもらったのですが、「仕事はこうやってやるんだ」っていう基本の基を教えてくれた人です。これからいろいろな仕事をしていくことになると思いますが、オリハラさんから学んだことがすべての土台になっていくのだろうと感じています。
「工期内にいいものをつくって利益を出す」という責任から逃げちゃイカン!ということですね。責任の重さがイヤになるときもあるかもしれないけれど、そんなときは「だからどうした、なんとかなるさ」と自分に言い聞かせて前に進むのですよ。
──なるほど。
ありとあらゆる工程を「全部100点満点」でクリアできればそれがベストですが、自然相手の仕事である以上それは不可能です。でも知恵と工夫で限りなく100点満点に近づけていく。これがプロの仕事だと思うし、すごくおもしろい。そのことをもっとたくさんの人に知ってもらいたいですね!