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Vol.2 土工事の計画を効率化するICTと三次元データの活用
日本国土開発の土工技術

Vol.3施工を効率化する
重機運用データの活用

土工事は、大きく「計画」と「実施」とに分けられる。
Vol.2でご紹介してきたように、ICTはこの「計画」の効率を大きく向上させることができる。測量士が何週間もかけて行っていた測量はドローンによって数時間で完了させられるようになった。ここから生成される三次元データを活用すれば、災害を防ぐための防災計画や、土をどこからどこへ運ぶかという土配計画なども効率化が可能となっている。

同じ重機、異なる結果

次は、これを使って実際に施工を行っていく。ブルドーザーやバックホウ、ダンプカー、その他多種多様な重機を活用して地形を変えていくわけだ。土工事を最短の工期で行うために欠かせないことがある。それは、最適な重機を、最適な場所に投入していくということだ。


たとえば、土をA地点からB地点に動かすと言っても、その方法はさまざまだ。ブルドーザーで押していくという方法もあれば、バックホウでダンプトラックに積み込んで運搬するという方法もある。

同じ重機、異なる結果

さらに、バックホウと言っても一度に扱える土砂の量によって異なる機種が存在する。大容量のバケットを持つ大型機種は、一度に大量の土砂を掘削できる一方で小回りが効かず、消費する燃料も多い傾向にある。平たく言えば、運用コストがかかる。「大は小を兼ねる」とはいかないわけだ。

さらに、バックホウと言っても一度に扱える土砂の量によって異なる機種が存在する。
  • このバックホウとペアを組むダンプカーにも、幅広い選択肢がある。
  • このバックホウとペアを組むダンプカーにも、幅広い選択肢がある。
    町中で見かけるような通常のダンプカーもあれば、車体の中間で折れ曲がり、不整地での走破性や小回り性能に優れたアーティキュレートダンプトラック(ADT)と呼ばれるタイプもある。通常のゴムタイヤでは走行ができないような軟弱地盤の上では、クローラーで走行するキャリアダンプトラック(CDT)が用いられる。

  • 「これさえ使えば間違いない」というものは存在しない。
  • これもそれぞれ性能に一長一短があり、「これさえ使えば間違いない」というものは存在しない。同じ重機を使っていても工事の結果に違いが出るのは、こうした運用のノウハウの多寡によるものなのだ。

土工事の計画と実施をデータでつなぐ

土工事で最大限の成果を上げるためには、「計画」と「実施」をワンセットとして考える必要があるのは言うまでもない。しかし、ここには分断が生じやすい。建設では計画を行う会社と実際の工事を行う会社が別になることが多いためだ。「会社」というハードルが存在することに加え、互いにどのようなデータを求めているのかの共有が難しく、データの有効活用が進みにくいという状況が生まれているのである。


一方、創業当時から土工事の機械化を進めてきた日本国土開発は、計画と実施の一貫性を追求。グループ内で重機の運用を担う国土開発工業と一体になり、互いのデータを連動させながら生産性の向上を目指している。


「実施」から得られるデータを見てみよう。
この図は、重機に搭載されたセンサーから得られた座標などの情報をもとに、運搬距離と運搬土砂の関係をグラフにしたものだ。

「実施」から得られるデータを見てみよう。

縦軸は1時間あたりの運搬土量(㎥/h)を、横軸は運搬距離(m)を示す。例えば、多くの土砂を扱えるブルドーザーは、主に数10m以内の距離で用いられている。それ以上の距離になると、効率が低下するためだ。
国内では日本国土開発のみが保有し、掘削と運搬・敷均しを一台で行うタイヤ牽引式スクレーパは赤枠部分だ。運搬距離100m以上、500m以下の領域で、青枠のダンプトラックを大きく上回る運搬土量を実現しているのがわかる。


こうした実際の施工から得られたデータを用いれば、計画との差異を見極め、その都度重機の運用計画を見直すこともできる。また、現場から得られる重機の運用データを蓄積し、土質などの別の情報と組み合わせることで、計画の精度を高めることにも用いることも可能だ。

土工事の「実施」という観点からデータを集め、使いみちを考え、生産性向上のための技術開発に活かす。

土工事の「実施」という観点からデータを集め、使いみちを考え、生産性向上のための技術開発に活かす。現場から生まれ、現場に貢献するこのサイクルこそが、長年に渡って土工技術の発展に貢献してきた日本国土開発らしいICTなのだ。(Vol.4に続く)