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Vol.2 土工事の計画を効率化するICTと三次元データの活用
日本国土開発の土工技術

Vol.2 土工事の計画を効率化する
ICTと三次元データの活用

建物を建てたり、道路をつくったりするためには、土を動かしたり、形を変えたりといった「土工事」、略して「土工」が欠かせない。日本国土開発は、戦後の復興期から常に土工の進化をリードし、長年にわたってノウハウを蓄積してきた。

土工の計画には時間がかかる

Vol.1でご紹介したように、土工事は「計画」と「施工」の大きくふたつに分けられる。今回ご紹介するのは、その中の「計画」に関する技術。すなわち、どこからどこへ土を運ぶのか、どのようにして災害を防ぐのか、その答えを効率的に導き出すというものだ。


まず必要なこと。それは、現状の地形を把握するということだ。求め方は難しくはない。敷地全体を細かくメッシュで区切り、面積×高さで計算をすれば、1区画あたりのおおまかな土量を導き出すことができる。この情報をもとにすれば、最終的な仕上がりの地形とするための計画が立てられるというわけだ。

土工の計画には時間がかかる

ただし、その準備である「測量」には時間がかかる。特に、山をひとつ切り開くといった大規模な土工事の場合はなおさらだ。草木が生い茂り、起伏もある現場を測量士が歩いて移動するのは重労働で、仮に30ヘクタール規模の測量を実施するとなると、少なくとも2〜3週間は必要となる。しかもこの測量、一度で終わりではなく、工事が進むたびに実施しなくてはならない。少子高齢化などを背景として人手不足が深刻化する中、大きな問題となっていた。

ただし、その準備である「測量」には時間がかかる。

データの活用が土工事の計画を変えた

こうした問題を解決するため、近年用いられているのがUAV(ドローン)による写真測量だ。地上から操作されるドローンは、上空を飛行しながら地上の写真を撮影する。一箇所を撮ったら少し移動し、また撮影をする。
写真そのものは二次元のデータだが、位置をずらして撮影することで三次元のデータになる。これは、人間が左右の目で少しずつ違う角度からものを見る(これを視差という)ことで奥行きを把握するという仕組みに似ている。

データの活用が土工事の計画を変えた

この方法を用いることで、測量士が現場を歩くことなく、上空から測量ができるようになる。これまで数日がかりだった作業も、ドローンによる写真測量を行えば数時間で完了するというわけだ。


さらに、従来は長年の経験や勘が求められてきた防災計画──どのようにして災害を防ぐのか──の策定にも、このデータは活用できる。
工事中に降った雨を適切に処理する「仮設防災」の計画立案のためには従来多くの経験や、その中で培われる勘が重要視されてきた。山の尾根に沿って流れる水がどこに集まるのか、どのくらいの量を見込んでおけばよいのか。これらはマニュアル化が難しく、一人ひとりの知識や技術に頼らざるを得なかったのだ。

ところが、ドローンによる測量で得られた三次元の地形データを用いれば、雨水がどのように流れてどこに集まるのかを、かなり高精度にシミュレートすることが可能となる。長年の経験を持つベテランでなくとも、ソフトウェアのサポートを受けることで防災計画の策定が可能になり、工事にともなうリスクの低減につながるのである。

ICTは万能ではない

ICTを建設現場に導入して生産性を向上させ、「魅力ある建設現場」を目指す。このテーマのもと、国土交通省は2016年に「i-Construction」を提唱し、建設業界全体での取り組みが進んでいる。とはいえ、これらは土工に関する課題をたちどころに解決する魔法のような技術かというと、そうではない。


データはドローンをはじめ、さまざまな機器から誰でも収集することができる。センサーの技術も発達しており、望めばたいていのデータは手に入ると言っていい。しかし、これの活用方法を考え、実際に土工の現場で使うには、機械のオペレーションをはじめとしたノウハウが必要になる。データを集める、データの活用方法を考える、データを使う……これらのプロセスが分断してしまっては、せっかくのデータも「宝の持ち腐れ」になってしまうのだ。
(Vol.3へ続く)

理想の土工事を実現するためには